【今月の駄話】テレビ局のYouTubeの使い方が変わってきた?スポーツに特化したチャンネル運用

2022/01/15

その月の世の中の話題から、コンテンツマーケティングやプロモーション、コミュニケーション戦略について考察する『今月の駄話』。2回目となる2021年12月の振り返りも、ユーフォニー代表・木村とコンテンツ制作パートナー・Tの2人でお送りします。

※今回は、埋め込みが許可されていない動画を紹介しています。内容が気になる方は、リンクからご覧ください。

YouTubeでテレビの編集前素材が見られる!?

【T】:記事のアップは2022年になっていますが、今回は2021年12月の振り返りです。

【木村】: 12月って、前半と後半で印象が変わりませんか?

【T】:前半は年末進行に追われて、慌ただしい印象が強いですね。それが落ち着くクリスマス辺りから、“年末”を意識してくる事が多いかもしれません。

【木村】:クリスマス商戦が終わった途端、年末商戦になりますしね。個人的には有馬記念が終わると、「今年も終わるな」と一気に感じます。

【T】:テレビや街中の広告で見かける機会も多いので、競馬に明るい木村さんのような人だけではなく、詳しくない人にも“年末の風物詩”というイメージが付いているでしょうね。

【木村】:「世界で1番売り上げの高いレース」なんて言われているので、広告費も桁違いでしょうから、“有馬記念”という言葉に触れる機会は多いですよね。競馬と言えば、「カンテレ競馬」というYouTubeチャンネルが、面白い試みをしていますよ。

【T】:カンテレと言うと、関西テレビですね。

【木村】:フジテレビと同じように競馬中継や、土曜深夜の予想番組みたいなのを放送しているんですけど、取材素材をうまくYouTubeで活用しています。

春から話題になっていたのが、「教えて!福永先生」という動画。福永祐一騎手が、コースの特性や出走予定メンバーから想定されるレースの流れや位置取りを事前に解説するものなのですが、ほぼその通りの展開になる事が続いて、注目を集めました。

●祝!日本ダービー制覇「エフフォーリアが見える位置で」【福永先生の展開分析】

【T】:競馬ファンからすると予想の参考になるので、ありがたい動画ですよね。

【木村】:この企画は、深夜の予想番組で放送したものをYouTubeに二次利用したのだと思います。当初は、テレビで使われたものを利用する形でしたが、秋からはほとんど編集されていない長尺の動画がアップされるようになったんです。

●「このジョッキーの手腕が試される」教えて!福永祐一先生 有馬記念の展開を特別分析

【T】:テレビだと、これだけの時間を使うことは難しいですもんね。質の高い取材素材であればあるほど、作り手としては「短くするのが、もったいない」という想いが強くなるので、何らかの形で出せるのは、良い試みですよね。

【木村】:取材を受ける側にとっても、編集によって誤った伝わり方をするリスクが減るので、あまり積極的に発信していなかった人が取材を受けるきっかけになるかもしれません。

テレビ局のYouTube活用法が変わってきた

【木村】:ここまでの試みも興味深かったんですけど、カンテレ競馬は年末にさらに一歩踏み込んだ企画を展開していたんですよ。

●地方競馬で通算3300勝超えのレジェンド・小牧太騎手に聞く!園田ダート1400m攻略法&桜花賞での号泣の裏側【兵庫ゴールドトロフィー2021】

【T】:園田競馬ですか。地方競馬も“競馬”なので、あまり踏み込んだ印象が無いんですけど……。

【木村】:ざっと調べた所、このレースは関西テレビでは放送されていないはずなので、YouTube(Web)限定の企画だと思われます。

これの何が踏み込んだものかと言うと、「YouTube限定でコンテンツを発信する」という形でスポンサーを引っ張って来た可能性があるからなんです。

【T】:YouTuberで言う所の“案件”ですね。確かにテレビ局がWebコンテンツのみで、スポンサーを獲得するのは珍しいですね。

【木村】:スポットCMの付加価値として、YouTubeの利用を提案した可能性もありますが、珍しいケースだと思います。

雑誌などの紙媒体だと、誌面とは別にWebサイトに力を入れていて、Web限定でスポンサーを募っていたりしますが、テレビ局はあくまで放送に注力するというスタイルがほとんどでした。そんなテレビ局が、YouTubeで独自コンテンツをきちんと見せるという形は、かなり踏み込んだ印象を受けます。

【T】:放送局として、これだけきちんとした独自コンテンツを発信するのは、珍しいのかもしれませんね。

テレビ局とWebの親和性を高めるニッチ戦略

【T】: テレビ局がYouTubeに独自のコンテンツを投入し出したという事は、出稿する企業にとっても選択肢が広がることになりますよね。

【木村】:テレビ局の持つ“コンテンツ制作力”を生かした、Webプロモーションプランというのが出てくるでしょうね。ただ、それは“テレビ局”という単位ではなく、別の指針の中で展開されていく可能性が高いように思うんです。

先ほどから紹介しているチャンネルも、“カンテレ”という放送局ではなく、“カンテレ競馬”という競馬に特化したものですよね。

【T】:Webメディアの持つ“ニッチな情報との相性の良さ” を考えると、テレビ局のチャンネルより競馬専門チャンネルの方が、YouTubeの特性に合っていますよね。

【木村】:テレビやラジオといった“公共の”電波メディアは、基本的に視聴者は情報を選べない。一方で、Webメディアはある程度の興味を持って集まってくる人が対象になる。このメディア特性の違いによって、放送局は旧来の価値観のままではWebの活用が難しかった。それを打破する1つの策が、“チャンネルを特化させていくこと”だと思います。

【T】:番組ごとにチャンネルを作ってしまうと、番組が終了してしまうとそれまでなので、ジャンルごとのチャンネルにするのが良いんでしょうね。

【木村】:この流れは、特に地方局のスポーツ関連に多くなってきているのかなと感じています。前回に続いて野球の話題になりますが、各チームのホームタウンのテレビ局では、そのチームの応援に特化したYouTubeチャンネルを展開しています。

【T】:大阪朝日放送の『虎バンチャンネル』、テレビ新広島の『カープ全力応援チャンネル』、東海テレビの『ドラHOTpress』など、色々出てきていますね。

【木村】:影響力のある演者が東京に集中しがちな傾向を考えると、現役選手やOBは注目を集めるコンテンツを作る上で、ありがたいリソースですしね。地方局にとって、プロ野球から始めていくのは、必然だったのかもしれません。

そんな野球関連で言うと、中日ドラゴンズの特化したCBCの『燃えドラch』でも、面白い試みをしていました。今は、掲載されていないですが、動画内に川上憲伸さんによるインフォマーシャルが入っていたんです。

【T】:ドラゴンズファンが多く観ているチャンネルで、ドランゴンズOBによる紹介なので、ラジオの生CMのような効果が期待できるでしょうね。

メリットだけではない目新しいプロモーション手法

【木村】:燃えドラchの場合は、本編のコンテンツ内容とは関係なく、テレビCMのようなタイミングで、川上さんによるサービス紹介が入ってくるという形でした。

ファンにとっては、川上さんの珍しい一面が見られて良いのですが、YouTubeにおいては、広告を避けるためにPremium会員になっている人もいます。そういう人にとっては、広告込みのコンテンツにはポジティブな印象を抱けないですし、サービスやスポンサーそのものに嫌悪感を抱くケースも出てくるでしょう。

【T】:コンテンツ本編に上手く組み込まれていれば良いですけど、流れを切ってまで広告を入れるのは考えものですね。

【木村】:すべての人からポジティブな反応をもらうのは難しいですし、あまり気にし過ぎると、当たり障りのない施策やクリエイティブになってしまいます。だから、ある程度の取捨選択や、どこまでマイナスを許容できるのかという事を考える必要はあると思います。

でも、視聴者やユーザーが能動的に選んだ行為を尊重せずにプロモーションを行うのは、短期的にも中長期的にもプラスにはならないでしょう。

【T】: “迷惑行為”のような印象を与えてしまいますよね。プロモーションの選択肢が増えるのは良いですが、コンテンツの特性を理解した上で出稿しないとマイナスにもなり兼ねないという事ですね。

【木村】:プロモーションや広告については、絶対に成功するという方程式も、絶対的な施策もありませんからね。様々な手法の長所と短所を理解して、いくつかの施策で補完しながら進めて行く必要があると思います。

【T】:小規模な組織だと本業の傍らで、プロモーションに関する情報収集をするのは大変でしょうから、ユーフォニーのような広告代理店や制作会社をうまく使って欲しいですよね。

【木村】:その場合は、コストの問題もあると思いますが、相性みたいな部分を大事にして選んで欲しいですね。外注先の企業や担当者にも、得手不得手があるはずですから。それに、競合や他社がやっているからと言って、自社にマッチするとも限らない。メリット、デメリットをきちんと伝えてくれるパートナーの方が安心できるのでは無いでしょうか。

【T】:Perfectな施策は無いですからね。goodやbetterを積み上げて、bestにしていくということですよね。

【木村】そうですね。自社の訴求したい事に対して、何がマッチするかを探りながら進めて行くぐらいの気持ちの方が、リスクやストレスを少なく出来ると思いますよ。

Profile

株式会社ユーフォニー

人のため、社会のために生み出された結晶をコンテンツを通じて必要としている人たちに届けるお手伝いをする会社。コンテンツによって企業やサービスに付加価値を与え、ブランド力の向上を図るとともに、発信した情報によって人や社会に貢献していくことをミッションにしています。