【今月の駄話】ポイントは“違和感”と“一貫性” 音質の違う声を活かす方法

2022/05/10

その月の世の中の話題から、コンテンツマーケティングやプロモーション、コミュニケーション戦略について考察する『今月の駄話』。2022年4月の振り返りも、ユーフォニー代表・木村とコンテンツ制作パートナー・Tの2人でお送りします。

意外性が間口を広げる!?『落合博満のオレ流チャンネル』

【T】:4月と言えば新年度の始まりなので、“心機一転”という季節でしょうか。

【木村】:お子さんが学生の方や、新卒の従業員が入ってくる企業に勤めている方だと、特にその印象が強いかもしれませんね。1月と並ぶ「何かを始めたくなる時期」ですかね。

【T】:“始める”という所では、オールド野球ファンの私にとって嬉しい驚きだったのが、この4月に落合博満さんがYouTubeチャンネルをスタートさせました。

 

【木村】:他のYouTubeに出演される事もなかったので、インパクトは大きかったですね。

【T】:想像していたよりもポップな演出だったので、私も含めて意外に感じた人も多いようです。落合さんの話と同じぐらい、演出についてもコメント欄で盛り上がっていました。

【木村】:落合さんのイメージからすると、重厚な雰囲気を想像しがちですよね。でも、それでは従来のファンだけにしか伝わらない可能性も高いので、間口を広げたい意図があるのかもしれません。

【T】:そういった意見に対して、コメント欄やチャンネルのTwitterなどを通して、意図を伝えたりしていて、“一緒に育てていく”というネットメディアの良さも感じました。

【木村】:制作・運営サイドとしては、その姿勢は参考にしたい所がありますね。

声とBGMのバランスはスマホで取れば良い?

【T】:あとは、音声についてのコメントもありました。BGMのバランスが悪いとか、質問者の声が聞き取り辛いとか……。これはテレビ番組なら、スタジオでエンジニアと調整を行って仕上げる部分でもあるので、予算に限りがあるオウンドメディアでは難しい部分もありそうです。

【木村】:そうですね。非常に専門性の高い部分ですからね。1つ言えるのは、「再生するデバイスによって音の聞こえ方が変わる」ということでしょうか。

制作側は「声とBGMのバランスはこれでOK」と思って、配信しているはずです。それでも、改善の要望が出てくるということは、制作の際に使っているデバイスと、多くの人視聴しているデバイスで音の聞こえ方に、大きな差異があるように思います。

例えば、大きなスピーカーで鳴らしながら編集をしているけど、視聴者はスマートフォンのスピーカーで鳴らしているとか、イヤホンで聞いているとか。

【T】:音関係のスタジオに入ると、特性の違うスピーカーがいくつかあって、聴き比べながら調整しますもんね。

【木村】:PCで編集をするなら、公開前のチェックをスマートフォンで行うようにするだけでも、その辺りのバランスの違いに気が付けるようになると思いますよ。

音質の違いが演出になる?

【T】:もう1つの“質問者の声”というのも、演出意図によって仕上げ方が変わってきますよね。

【木村】:質問内容が掴めないというのは良くないですが、オンマイクかオフマイクかは、意識的に変えるのもアリですからね。

例えば、弊社で制作している『JMC BASE』というYouTubeチャンネルでは、質問者の声はオフマイクにしています。

 

【T】:ノイズや聞き取りやすくするための処理は必要ですが、出演者と質問者の立ち位置が明確になりますね。

【木村】:もう1つ。これも野球関連なのですが、こちらも見てもらえますか。

 

【T】:こっちの動画は、オンマイクですね。出演者と質問者の関係性が、フラットに近い印象になります。

【木村】:マイクとの距離感が変わるだけで、それだけ印象も異なってくるんです。オフマイクだと、音声にある種の“違和感”が生まれるので、話題が変わったことを伝えやすくなる一面もあります。

一方で、違和感が続くと不快になる可能性が高いので、対等に近い形でトークを繰り広げる場合には、オンマイクの方が心地よく感じられると思います。

良い音質・良い画質は、どこまで追求すべき?

【T】:私は長くラジオ番組をつくってきて、なるべくオンマイクで収録するのが良いと思っていたんですけど、メディアによって“使える音質”が変わってくるんだなと感じます。

【木村】:音声だけのメディアだと、ユーザーの感覚が耳に集中しますよね。その分、ノイズなどの違和感に鋭敏になるので、オンマイクで良い音質をというのが基本になるのは、その通りだと思います。

ただし、その中でも取捨選択が出来る部分があるのではないでしょうか。

【T】:そう言えば、ラジオ番組でも電話を繋いだりしているので、必ずしも良い音質の声だけでは無いですもんね。

【木村】:スタジオのマイクと比べると、違和感はありますよね。

【T】:よくよく考えるとその音質の違いを使って、あえて現場感を出したりしていたので、動画でも同じ事が出来るということですね。

【木村】:良い音質・良い画質を意識するのは大事だと思いますが、”聞かせたい事””見せたい事”がきちんと収まっていて、音質・画質に一貫性があれば、最低限の機材レベルでも成立すると思います。視聴者もその音質や画質に、慣れてきますから。

電話での通話やリモート会議も、対面と比べると相手の顔の解像度や声の質は圧倒的に低くなっているのに、それほど気にならないでしょう?

【T】:確かに。その音質が、当然という風に思っていますよね。

【木村】:最低限の事がクリアできていて、それがスタートから終わりまでブレなければ、その環境に違和感は無くなります。だから、動画メディアでも音声メディアでも、最低限の質でもそれを最後まで維持できれば、大きな問題にはならないと思います。

【T】:とは言え、その“最低限の質”が難しい部分ですよね。4Kや8Kがある今、ブラウン管には戻れないですから……。

【木村】:ユーザーの求めるレベルが上がっているのは確かなので、それも一理あると思いますが、「何を見せたいのか?」次第かなとも感じます。キレイに見せたいのであれば、4Kや8Kに分があるでしょうが、情緒的に見せるならあえてブラウン管品質にするというのもアリでしょうから。

先ほどTさんが仰ったように、チャネルごとに求められる最低限の質は変わってくるので、プラットフォームの特性も考慮した方が良いと思います。

【T】:収録・編集も大事ですが、予め方向性を決めておくことも重要だということですかね。とは言え、可能な限り良い音質・良い画質で収録できるように、これからも色んな情報をキャッチしていきましょう!

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株式会社ユーフォニー

人のため、社会のために生み出された結晶をコンテンツを通じて必要としている人たちに届けるお手伝いをする会社。コンテンツによって企業やサービスに付加価値を与え、ブランド力の向上を図るとともに、発信した情報によって人や社会に貢献していくことをミッションにしています。