【今月の駄話】コンテンツマーケティングの第三勢力 企業によるポッドキャストが本格化してきた

2022/02/16

その月の世の中の話題から、コンテンツマーケティングやプロモーション、コミュニケーション戦略について考察する『今月の駄話』。3回目となる2022年1月の振り返りも、ユーフォニー代表・木村とコンテンツ制作パートナー・Tの2人でお送りします。

視覚から聴覚へ 新書本のポッドキャストによるPR

【T】:2022年1月の振り返りです。早くも1年の1/12が終わっちゃいましたね……。

【木村】:“行く”“逃げる”“去る”なんて言いますけど、年初は本当にあっという間に時間が経ちますよね。

【T】:木村さんの2022年のスタートは、どんな感じですか?

【木村】:今年に入ってから、仕事中にポッドキャストを聞く割合が増えてきましたね。

【T】:Amazonオーディブルで配信されている『Mathew’s Matthew マシュー南の部屋の中のマシュー』の初回に、休養中の松浦亜弥さんがゲスト出演して話題になりましたよね。音声だけだとメイクや衣装を気にしなくて良いので、ビジュアル面にこだわりのある人は動画メディアよりも動きやすいでしょうね。

【木村】:そうですね。マシュー南のものはプラットフォーム側が主体となって企画したコンテンツのようですが、一般企業の間でもポッドキャストの活用を模索する動きが活発になってきた印象があります。これまでは、ラジオ番組のアーカイブや“個”が発信しているものが目立っていましたが、最近は企業が主体になったものも増えてきました。

【T】:Webマガジン、YouTubeに続くコンテンツマーケティングの選択肢として、ポッドキャストが動き出している感じですね。

【木村】:ポッドキャスト自体がまだYouTubeほどの影響力を持っていないので、テストケースだとは思いますが、興味深い流れですよね。

個人的に、音声メディアとのマッチングが良さそうだなと思ったのが『聴く講談社現代新書』。講談社現代新書シリーズの中から1冊を取り上げ、概略と冒頭を朗読しているものです。

【T】: 読むと聞くでは想像の仕方が変わってきますね。新鮮な体験で面白い!

アメリカなんかでは、本を朗読する“オーディオブック”が日本以上に広がっているんですよね。本と音声メディアの相性が良いという事が、これを聴くと分かります。

【木村】:アメリカのように、普段の移動に自家用車を使うケースが多い所では、音声メディアが発展していますよね。どちらもユーザーの想像力に働きかけるメディアなので、書籍の紹介にポッドキャストを使うのは非常に効果的だと思います。

【T】:10分のナレーションだとすると、3000文字ぐらい……。それだけの文字数の“作品紹介文”となると、少し野暮ったい感じになりますね。音声に転化する事で、良いバランスになっている印象がします。

【木村】: Webでは3000文字だとボリュームのある記事に分類されるので、紹介だけで終わってしまうとユーザーには少し物足りないでしょうし、本題に踏み込み過ぎると“読んだつもり”になって購入に繋がらない可能性もありますしね。

【T】:音声にすることで、“ながら”接触が出来るので、これまでとは違う層に届きそうですね。

【木村】:出版物の売り上げの中で、新書本の割合は1.5%程と言われているので、それほど広告費をかけられないんですよね。だからこそ、チャレンジが出来たという面もありそうです。

【T】:これが上手くいくと、書籍のポッドキャストによるPRも増えてくるかもしれませんね。

空気感を活かす 2つのライフスタイルブランド

【木村】:企業のポッドキャストで言うと、『無印良品 くらしのラジオ』というのも面白いですよ。

【T】:こちらも、読み物を音声メディアに変換したコンテンツがありますね。

【木村】:くらしの良品研究所というサイトに掲載されたコラムの朗読ですね。

【T】:淡々としていますけど、その素朴さが無印良品のブランドイメージと合っていますよね。派手な演出があるとこちらも身構えてしまいますが、リラックスして聴ける印象です。

【木村】:くらしの良品研究所というサイトの更新は2022年1月で終わってしまったのですが、ポッドキャストは継続していくようですね。Webマガジンを辞めて、どのようにポッドキャストを利用していくのかは、注視していきたいですね。

もう1つ、中川政七商店が今年から始めた『暮らしの手ざわり。』も興味深いですよ。

【T】:本編は親交のある2人による対談で、ふんわりとした雰囲気が出ていますけど、プロの喋り手であるクリス智子さんのナビゲーションが入る事で、メリハリが出ていますね。それに、メインの2人が他の組み合わせになっても、クリスさんの声によってコンテンツの世界観が統一できますね。

【木村】:これは上手な演出ですよね。音声コンテンツは立ち上げやすい一方で、“編集に限界がある”という面があるんですよね。動画だと説明不足をテロップやインサートで補えますし、記事の場合も補足ができます。

【T】:音声の場合、同じ環境で追加収録しなければ自然な形の編集は難しいでしょうね。

【木村】:『暮らしの手ざわり。』の本編に出ている2人は親交があるので、お互いの共通認識で言葉にしなくても伝わる部分も多いでしょう。そうすると、リスナーに対して説明が不足するケースも起こりやすい。それに、メディア露出には慣れていても、喋りのプロではないので、ディレクションが入り過ぎると、求めている空気感を損なってしまう可能性もあります。

ナビゲーターを使う事で、出したい雰囲気をそのままにしながらも、リスナーに対して足りない部分も説明が出来るようになっていますよね。

【T】:声は本当に誤魔化しがきかないですからね。

【木村】:他のメディア以上に、演者に依存する部分が大きいかもしれませんね。

企業でポッドキャストを始めるとすると、プレゼンや商談に慣れている人が出演するケースが多いと思います。その場合、いつものような喋り方をしてしまうと、なかなかファンが付きにくいかもしれません。

【T】:確かに、“話し上手”の種類が違いますね。

【木村】:プレゼンや商談は“説得”する必要があるんですけど、楽しんだり知的好奇心を満たすために選んでいるコンテンツでは、説得は逆効果になる可能性が高いんです。リスナーが“共感”出来るように話していく事が、重要になってくると思います。

【T】:説得しようとすると高圧的に映る場合もありますし、そこは切り分ける必要はありますね。

【木村】:コンテンツマーケティングは“購入者をつくる”のではなく、“ファンをつくる”のに適した手法ですからね。

【T】:ポッドキャストの動きは面白そうなので、これからも気にかけていきましょう。

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株式会社ユーフォニー

人のため、社会のために生み出された結晶をコンテンツを通じて必要としている人たちに届けるお手伝いをする会社。コンテンツによって企業やサービスに付加価値を与え、ブランド力の向上を図るとともに、発信した情報によって人や社会に貢献していくことをミッションにしています。